BBC政治部長交代

少し垂れ流しになるが、いいや。
ここでもしばしば言及している「英国メディアウォッチ」の9月2日のエントリーで「BBC政治部長ニック・ロビンソン氏」とあったので、あれっと思った。
 ニック・ロビンソンは確かにもともとはBBC政治記者だったが、過去2年やそこら民放のITV政治部長としてひきぬかれていたからだ。
 ということは、またBBCに戻ったということか? しかも政治部長だ。ひょっとすると、BBCはアンドリュー・マーの後釜としてITVからニック・ロビンソンを引き抜き返したのかもしれない、と思った。
 というわけで、少しウェブをあさってみる。案の定だ。ガーディアンで、ニック・ロビンソンのインタビューをやっているのがウェブにあがっている。
 この記事については後でふれるとして、とりあえずアンドリュー・マー(Andrew Marr)について少し書いておこう。
 アンドリュー・マーは、おそらく現在もっとも尊敬をうけているジャーナリストの一人だ。僕は彼のファンである。彼の書いた本をこの夏買ってきて、楽しみにちびちび読んでいるところなのだ。
 彼は1959年のグラスゴー生まれ、ケンブリッジのトリニティー・ホール・カレッジで英文学をやったあと、1981年スコットランドのメジャーな新聞社スコッツマンに見習で入社、政治部記者をやったあと、インディペンデント紙で2年間働き、それから86年にスコッツマン紙に戻り、88年から92年まで「エコノミスト」の政治記者をやって、92年には再びインディペンデント紙に今度は筆頭政治論説委員として移り、96年から2年間同紙の編集に携わった。その後、デイリー・エクスプレス紙とオブザーバー紙でコラムを書いて、その後、2000年5月にBBCの政治部部長になった。(このあたりはid:flapjack:20040702#p1とあわせて読んでいただけるとありがたい。)
 この人の解説のすばらしさはなかなか説明できない。とりあえず、彼のしゃべりを聴いてくれとしかいえないのだが(たとえば、BBCの彼の紹介記事であるこのサイトから聴ける)、その政治的識見においてもそのしゃべりのスタイルにおいてもクリスプ(crisp)としか形容できない。
 文才もあって、僕がかってきた彼の最新の本(去年の9月に出たが、この7月にペーパーバックになったばかりなのだ)My Trade: A Short History of British Journalism(『私の職業:イギリス・ジャーナリズムの短い歴史』)も絶賛されている(たとえばamazon.co.ukの当該ページを見よ)。My Trade: A Short History of British Journalism
 とりあえず紹介文を訳しておこう(ひどい訳だけどあんまり時間をかけられないのだ)。

イギリスでもっとも有名なテレビ・ニュース記者の一人によるジャーナリズムについてのメモワール。なにが「記事になる話」で、なにがそうではない、とどうやって決めるのか? 新聞の編集者は一日中実際になにをやっているのか? どうやってハック(hacks:原義のハッカーと同じような意味、マーは自力で記事を集めるやり手の記者の意味でつかっている)はスクープを見つけるのか? どうやってテレビ局はその日のニュース項目を選ぶのか? どうやって、ひどい、面食らうようなことをいうように人々を説得するのか? 誰がどのくらい稼いでいるのか? どうやって、ジャーナリストは、彼らがときどく振舞うようなことをしたあとで、鏡を覗き込むことができるのか? この内部に精通した人の本の目的は、これらすべての問い(そしてもっと多くの問い)にこたえることである。アンドリュー・マーのすばらしい、そしてすばらしく笑える本は、われわれ新聞を読みニュース番組を聞いたり見たりする人たち、そしてその先をもう少し知りたい人たちのガイドである。アンドリュー・マーは、現代のジャーナリズムの物語を、彼自身の経験を通じて語る。この本は、非常に読みやすく、非常にユニークに、現代イギリスのジャーナリズムをそのヘンな魅力、打ち砕かれた希望、そして未来の可能性とともに描いた社会史である。

 そのアンドリュー・マーは、今年になってから政治部部長を降板した。その理由は、日曜日の朝の政治番組ブレックファースト・ウィズ・フロスト(Breakfast with Frost)の司会を長年してきたデイヴィッド・フロストが引退をあきらかにし、その後任となることが決まったからである。6月半ばにフロスト司会の最終回が放送されたようだが、この番組はフロストの国内外の大物政治家へのインタビューを中心にした重厚な政治番組だった(番組のウェブサイトはこちら)。フロストを引き継ぐ番組の司会をするということで、アンドリュー・マーは「殿堂入り」をしたというふうに見られている。ただ、最後のあたりは少し緩くなったと思われているフロストと異なるアンドリュー・マーのスタイルがどうなるかを楽しみにしている人は多いだろう。
 となると、今度はマーが抜けて空席となってBBC政治部長の座が誰のものになるか、という点が注目の的となる。実際、最初にあげたニック・ロビンソンのインタビュー記事の最初でも、この夏のイギリス・メディア人事でもっとも注目をあつめていたのがアンドリュー・マー後任人事だったと書いてある。それを射止めたのがロビンソンというわけだ。
 このインタビュー記事を読むと、イギリスのテレビで政治家と厳しい質問のやり取りをする政治記者が要求される能力などについてかなり知ることができるだろうと思う。
http://media.guardian.co.uk/site/story/0,14173,1562596,00.html
 で、これを少し訳してみようかとも思ったが、疲れたので、今日は終わり。だいたい何でもそうだが、おもしろいところまでに時間切れになったり疲れてしまったりする。
 あ、あと今日からアマゾン・アフィリエイト開始してみる。アカウントだけは以前とっていたが、つかってなかった。

微妙に修正。