500年まえの「テロリスト」

台風一過。部屋から富士山がくっきりと見える。ひさしぶりだ。
Jane Stevensonによる「イエズス会士再訪 Jesuits revisited」というガーディアンの論説。この中には一度もイスラム教徒が言及されていないが、500年前のカトリック教徒急進派と現在のイスラム教徒急進派が重ねあわされている。要約・部分翻訳する。

 ヘンリー8世による「宗教改革」を経て、イングランドカトリックの信仰を持つことを禁じた。だが、当然ながらカトリックの信仰を維持しようとする人々は存在しつづけた。そういう人々のネットワークの中心には、カトリックのなかでも急進的なグループでだったイエズス会士たちがいた。当時のイングランドの政府にとって、カトリック教徒はすなわち外国勢力(とくにフランス)による国家転覆に繋がる危険な存在だった。なかでも、イエズス会士たちは、今のイギリス政府の言葉をつかえば内なる「テロリスト」だったわけだ。
 政府はヒステリックにイエズス会、そしてカトリック教徒を見つけ、捕らえ、処刑しようとした。海外に逃れた熱心なカトリック教徒は、イエズス会の学校で教えをうけた。彼らの一部は、通常の政治回路に望みをもつことができず、議会を爆破、ジェームズ1世と上下両院議員を殺害しようとした。「火薬陰謀事件」(the Gunpowder Plot)だ。
 ここから学べる歴史的教訓は1)政府が法的手段だけにたよって反体制聖職者たちをコントロールすることは不可能だということ、2)ある信仰をもった人たちの共同体(この場合はカトリック教徒たち)の力を弱めようとすることは、絶望をまねき、絶望が暴力による実力行使へつながる。
 だが、それは19世紀にはカトリック教徒の市民権が完全に回復されたことは楽観的な見方も許す。イギリス社会にカトリック教徒が統合されていったという事実は「国家とマイノリティーの双方が、相互に対する猜疑と憎悪をのりこえることは可能だ」ということだ。「現在の状況においてこの相互理解にかかる時間がもっと短くすめばいいのだけれど。」