フランス=イギリス―心理的なあや

もちろん、こうしたEU経済改革についてだけが、論点なのではなくて、イギリスとフランスのあいだには微妙な心理的あやが存在する。たとえば、小林恭子さんは、「フランスが悪い」という最新のエントリーでイギリスの政治家たちがEU憲法国民投票で否定されるのを避けたいがゆえに、フランスに責任を転嫁したいという流れがイギリスにあることを指摘している。それは確かなのだけど、政治家の都合以上の心理が国民に存在していることも指摘しておきたい。同じQuestion Timeの視聴者の意見のなかにはこういう意見がある。

Text: We need a French yes. Without that, we cannot say no.
Jules, Sherborne
私たちには、フランスのウィが必要なの。それなしに、私たち、ノーっていえないから。
ジュールズ(シェルボーン在住)

Text: For the first time ever, the French could do us a favour and say no to EU.
Mike, Dover
これまでで初めて、フランス人がEUにノーということでわたしたちにいいことができるんじゃないか。
マイク(ドーバー

といったものだ。いずれの発言も示していることは、イギリス人自身もEU憲法に対してノンというのに対して心理的な引け目があるということだ。ここらへんがそとからみていてEUの議論が一筋縄ではいかない部分で、こういう感情があるかぎり簡単にEUは死んだりしない、という気がするのだった。

 蛇足:あと、ジェクとクックのあいのこのような、こういう人もいるのね。

As both a British and French citizen I will be voting in both referenda. In Britain I will be voting YES, but in the French one, I'm voting NO. I don't feel the UK has the credibility to both reject it and stay in the EU, whilst if France votes no, we can actually get rid of this compromise that no-one really likes. Then we can get back to the long task of debating what we actually all want from the EU, rather than just writing a constitution because hoity-toity eurocrats have nothing better to do.
Luke Sibieta, London
イギリス市民かつフランス市民である自分は、両国での国民投票で投票することになるだろう。イギリスではイェスに投票するつもりだけれども、フランスではノンに投票するつもりだ。EU憲法を否定しながら、EUのなかにとどまりたいなどという資格がイギリスにあるとは思えないし、もしフランスがノンといえば、誰もが本当には好んではいないこの妥協の産物(EU憲法)を取り除くことができるだろう。そうすることで、高慢ちきなEU官僚たちが他にやることがないからという理由で憲法を書くなんて仕事ではなくて、実際に私たちが何をEUから望むのかについて議論し続けるという仕事にもどることができる。
ルーク・シビータ(ロンドン)