ヨハネ・パウロ二世、最良にして、最悪の時代

 教皇が死んだ。そのあおりで、イギリスではチャールズとカミラ・パーカー=ボウルズの結婚式が延期になるらしい。それはどうでもいい。なんだかよくわからないのは、ローマとかいろんなところでカトリックの人が教皇の死を悼んでいるのをみて、急にしおらしくなっている人たちのことだ。それもどうでもいいけど。
 教皇ヨハネ・パウロ二世の歴史的な評価というものを下すには時期尚早であるわけだけど、まだ死の前である土曜日のガーディアンに掲載されたClifford Longleyの筆による論説(社説ではない)は最良にして、最悪の時代 The best and worst of times と題されている。この記事で以下のことが展開されているというわけではないのだが、その「最悪」の部分に関連して少し書く。
 この教皇が避妊に関して極端に保守的な論調をとっていたことーたとえば、コンドームは生殖をさまたげる避妊となるからつかうべきではないという教えーは知られている。その具体的な帰結の問題は日本ではあまり知られていないかもしれない。カトリック教会は、HIVの感染を妨げるためのコンドーム使用ですら、「コンドームには(目に見えない)穴があいているから役にたたない」と教えて、コンドームの使用を妨げているのである。ある聖職者は、コンドームはHIVウイルスに浸されてるとさえいっている。これは世界保健機構(WHO)や国連UNAidsとかも非難している。
 こうした避妊禁止/コンドーム禁止の影響がでるのは、ヨーロッパや北米といったところよりも、熱心でかつ無学なカトリック教徒が数多くいる地域、すなわちアフリカの一部/ラテン・アメリカ、フィリピンといったところだ。実際に、フィリピンのスラムとかで子だくさんのお母さんにインタビューすると、カトリックの教えを忠実に守った結果としての子だくさんであり、HIVウイルス感染だったりしているらしい。*1 
 ヨハネ・パウロ2世の時代が、新教皇によってどのように引き継がれるのか、膨大な数の人々の命がかかっている。

*1:といったあたりの話は以下のBBCのサイトを参照のこと。http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/3176982.stm