ブログと政治右派の蜜月関係

しかし、実は今日のヒットは、前保守党党首イアン・ダンカン=スミスの論説だった。なんとウェブログについて書いているので驚いたけど、これについては明日にでももう少し書き足します。
+追記+
 このイアン・ダンカン=スミス(これからはIDSと略する)の論説それ自体はすぐれたものではない。というかダメ文章なんだけど、徴候的という意味で面白かったのだ。
 要するに、IDSはブッシュの再選を導いた中心人物であるカール・ローブの言い分を持ち上げて、それはイギリスでも可能で「ブロガーが右派を救うだろう」(これが論説の表題)といっている。
 ブロガーはすでにアメリカのテレビ界における二つの有名どころをぐらつかせている。ひとつは、CNNのチーフ・ニューズ・ダイレクター(だから報道課長か)であるイーソン・ジョーダンが、アメリカ軍がジャーナリストを意図的に狙ったのだということをダボス会議で言ったのを、メインストリームの媒体の記者は報道しなかったが、ロニー・アボヴィッツ Rony Abovitz というそれまで無名のブロガーがとりあげて、さらにそれを数百のウェブサイトが取り上げたおかげで辞めざるをえなくなった。
 もうひとつは、日本でもよく知られている事例で、去年の秋ブッシュのベトナム時代を批判したCBSのニュースが実は捏造文書にもとづいていたものだったということをブロガーが暴いて、ダン・ラザーが降りることになった話。
 同じようなウェブログの「革命的効果」が民主党側=左派にもうまく働いておかしくないにもかかわらず、「大失敗に終わっている」。そういうわけで、IDSは、ブログが「右派を救う」というわけだ。
 で、民主党がブログにおいて「大失敗に終わっている」というのが、id:lovelovedog:20050221#p1で引用されている部分だけれど、この段落では、ハワード・ディーンを熱狂的に応援したネットの人たちがいたけど、彼らは民主党の支持者の典型というわけではなかったぐらいのことしか実質的なことはいえていないと思う。そこから敷衍して、そういう人たちがメインストリームの人を遠ざけてしまったというニュアンスは伝わるがそう明記していない。あとは、反マイケル・ムーアサイトの揶揄を繰り返しているだけだ。どう大失敗なのかも説明できていなければ、なぜ、失敗したのかについての説明もIDSはしてくれない。アメリカの「ブロゴスフィア」(「ブログ言論圏」とでも訳しましょうか)にイギリスの右派もあやかろう、と言っているだけだ。で、この程度のことをのべた論説を、保守党の前党首が、しかも、こうしたスローガンがもっとも通じそうにない読者層を持つガーディアンに投稿しているところに、労働党の敵になれていない現在の保守党の哀しみがある。その哀れさがちょっとツボ。
 そうこうしている間にも、こんなはなしがでてきている。現保守党党首のマイケル・ハワードがユダヤ系で、彼の父親だったか祖父だったか自身が大陸でのユダヤ人迫害をのがれてイギリスにやってきた移民の末であるというのはよく知られている。で、マイケル・ハワードは今年の総選挙の中心的論点に移民問題をもってきている。それで、移民にきびしい制限をかけるべきだというかたちで、議論を右のほうにひきずっている。いわく、不法移民は直ちに強制送還するべきだ、とか。*1 で、数日前だけれども、タブロイド紙がマイケル・ハワードの父親だったか祖父だったか自身が、一時的にせよ不法移民であったことをあばいて「なんじゃそりゃ」と。そういうわけで、保守党はメディアでどうもいいイメージをつくれない。
 これは印象なのだけれども、イギリスにおけるブロゴスフィアアメリカや日本のそれよりも存在感が薄いのだけれども、それはこうしたタブロイドやクオリティー・ペーパーやBBCがある意味アメリカや日本におけるブログ的な機能をすでに担ってしまっているような。だからこそ、IDSは、既存のメディアではなくブロゴスフィアだといいたくなってしまうわけだ。

*1:どこかのブログで詳しく扱ってるのを見たけどどこか忘れた。