ロンドンの話(続き)

id:flapjack:20050123#p2でふれたロンドン特集がウェブにあがっているのを発見(ガーディアンに関してはすべての記事がウェブにあがっているはずだから当然なのだが)。
London: A World in One City
ここから地図もぜんぶ見られるみたい。それで引用した英文元記事は以下の一部分。
From Afghanistan to Australia via Italy, Bangladesh, Colombia and Japan
 こうした地図は引用した部分でも書いてあるけど、2001年だったかの国勢調査を元に作成してある。この国勢調査の、自分の宗教、あるいは自分を何教徒と考えるか、という欄で、ロンドン市民のうちの一パーセントぐらいが「ジェダイ」と答えていたらしい。スター・ウォーズ世代だな(w ちなみに、この人たちは結局「無宗教」に分類されたそうだ。
 それはともかく、奥さんが読み終わったばかりの小説がこういう多民族イギリス、特にロンドンの状況を見事に活写している本なのだった。ゼイディー・スミス Zadie Smith White Teeth (ISBN:0140276343)。この小説も読め読めと薦められているので、ここのところ途中休み中の A Suitable Boy(それでも600ページぐらいは読んだ。けど、これでも半分いっていない)とこないだ飛行場の本屋でたまたま見かけて買った Luther Blissett(という名のもとに出された)『』(これが僕的にはかなり楽しい小説)というのが終わったら読みたいものである。しかし『ホワイト・ティース』翻訳がでてたのね(ISBN:4105900234)。イギリスではかなり話題になりドラマ化までされた小説だから今の日本だったら翻訳がでてないほうがおどろきだろうが、しかし、かなりディープな個人名がでてくるみたいだし、翻訳者の方もご苦労なことだ。ほんと翻訳ってたいへん。
 それはいい。とりあえず、アマゾンの『ホワイト・ティース』の紹介を引用しておこう。

この小説について話す前に、まずは作者のゼイディー・スミスを紹介しなければならない。1975年、ロンドンでイギリス人の父とジャマイカ人の母との間に生まれている。ケンブリッジ大学在学中に破格の契約金を得てこの小説を書いたこと、ラシュディが絶賛したこと、移民の血を引くうら若き才媛は話題に事欠かない。新しいミレニアムを迎えて、最も注目の作家と言ってもいいだろう。
物語の核には、ロンドンの下町っ子アーチーと、バングラデシュ出身のイスラム教徒サマードの半世紀にわたる友情がある。2人を巡る物語は時代や舞台を越え、種々雑多な人種、文化、宗教、言葉が絡み合いながら展開する。イスラム原理主義者、エホバの証人レズビアン遺伝子工学者、動物愛護主義者などが次々と登場し、ときにスミスの描く人物は過剰なほど個性的だ。しかし、この小説に描かれたディテールのすべてが、現在のロンドンに確実に存在していると言えよう。イギリスは、複数の異文化が軋轢(あつれき)と融和を繰り返しながら、新しい形の豊かな文化を作りだしている。この作品にも描かれた多様性こそが、活況を呈す「クールブリタニア」の原動力にほかならない。
「ハイソ」なガーデニングアフタヌーンティーではなく、リアルなイギリスを感じたい人におすすめの1冊だ。ビートの利いた現代的な叙事詩とでも言おうか、コミカルな表現にところどころ笑わせられながら、一気に読み進めることだろう。やや唐突な感じのするエンディングに物足りなさも感じるが、ここまでのプロットとディテ―ルを24歳にして書ける作家である。近い将来、彼女は更なる傑作を生み出すことだろう。お楽しみはこれからだ。(齋藤聡海)

 クール・ブリタニアというのは最近ひさしくきかない言葉だけど*1、でも、この小説はそんなかんじみたいです。
 アマゾンで検索すると彼女の第二作The Autograph Man (ISBN:0140276343)もすでに翻訳されていることを発見。『直筆商の哀しみ』(ISBN:4105900382)という邦題。佐藤亜紀日記

ちなみに2004年のベストはトマス・ベルンハルト「消去」と笙野頼子「金毘羅」、次点はゼイディー・スミス「直筆商の哀しみ」であった。

と高く評価している。
 ここらへんと日本の在日文学(ヤンソギルとか?)を読み比べてみるというのはおもしろいかなあ、と思っている。

*1:90年代後半にニューレイバーとして労働党が波にのっていたころにもてはやされたキャッチフレーズ