アメリカ知識人の態度

上の階級の話が、アメリカとイギリスの差異の話と繋がると書いたけど、それに関連するとりあえずメモとして引用。下のほうでも書いたけど、イギリスに逃避しているアメリカ人たちが身近にいるし、彼らに関して少し同じようなことを思っていたので。機会があればそのあたり彼らと少し話してみたいけど。

唐沢俊一 裏モノ日記(11月4日(木)付)
http://www.tobunken.com/diary/diary.html

 一番ヒドイと思ったのは、ケリー支持=都市部中心、ブッシュ支持=地方中心とい うデータを受けての、農村地帯批判が盛り上がっていること。無知な田舎の牛飼いや 農耕者には投票権などやらずに、教養ある都市圏の人間だけで大統領を選出し、世界 を動かしていこうということか。思わず苦笑する。教養人という人たちは、やはりホ ンネのところでは民主主義がお嫌いらしい。あんたがたのそういうホンネを敏感に感 じ取った人々が、唯一の自分たちの武器である一票を有効に使ったことによって、ケリーは敗北を喫したのである。ブッシュに再選を果たさせたのは、マイケル・ムーア を先頭に、ブッシュを(その支持者を)バカバカバカと言い続けてきた(いや、言う ことの快感に酔っていた)反ブッシュの人々の、その態度なのだ。彼らが食べる小麦 も、大豆も、牛肉も、みんな地方の田舎者が作っている。それらを飽食しながら自分 たちを啓蒙しようとする奢った文化人たちへの、今回の選挙結果は痛烈な返礼だ。

 私は、2003年3月28日の日記で、今回の選挙結果の先取りとも、言えば言え ないこともない事実を指摘している。
http://www.tobunken.com/olddiary/old2003_03.html
 いばるわけではない。こんなこと、向こうに知人・友人の2、3人もいればちゃん と伝わってくることだ。それも見えなかった、見ようとしなかった日本のマスコミ、 ジャーナリストたちって、いったい何なのか。現実を見据えず、自分の理想の世の中 ばかりを目の前にブラ下げていた結果なのではないのか。アメリカ人がクシャミをす れば日本人は風邪をひく。遠くもなく同じ保守化は日本を襲うだろう。いや、すでに その徴候は顕著だろう。市民運動も結構、リベラル派の意見の方が正しい場合がある ことも少なからず認める。しかし、なぜ、そのような意見が主流になりえないのか。 それは何度も言うが、その意見をデモクラシー下で国民に伝える、根本の方法、そし て態度が間違っているからではないのか。私は山形浩生氏ほど不人情ではないので、 本気で彼らの行く末を心配してしまうのである。

「N.Y.や西海岸あたりの知識人が、ブッシュの無知をあざ笑えばあざ笑うほど、 彼の支持基盤であるテキサス等、中央部でのブッシュへの肩入れは強固なものになっ ていく。忘れてはいけないが、アメリカという国は基本的に田舎者が大多数の国なの だ。知識をひけらかし自分たちをバカにする都会ものに対する、純朴な良き農民、牛 飼い、季節労働者たち非エリート層の反発がブッシュの力だ。彼らは、アメリカ人の アイデンティティを奪おうとするインテリたちに、根本的なところで抜きがたい不信 感を持っている。ブッシュはそこをうまい具合にすくい上げ、強いアメリカ、不正の 前に屈するよりは名誉ある孤立を選ぶアメリカのイメージを自らの上に重ね合わせて いる。
 ものを知らない、よく言い間違いをする、文法を誤って使う、しょっちゅうジョー クをハズす、嗜好が幼稚である、というようなことでマスコミはブッシュを笑い者に する。これは平清盛がノシ上がってきたときの宮中公家たちの態度、ヒトラーが台頭 してきたときの旧プロイセン貴族たちの態度と同じだ。彼らの立場がその後どう逆転 したかは、歴史の教えるところである。ブッシュを甘くみてはいけない。彼のような タイプのリーダーは、本当に恐ろしいのだよ(2003年日記より)」