勘違いしていくおじさんたち

日本の男、というのは、いわゆるイメージとは違って、 天地の下にただ一人あると思うべし、というか、奇妙な変人が多い。そして、 その変人を、日本の女はじっとささえている。(id:finalvent:20041013#p21)

わはは。id:walkinglint:20041013#p23経由で読んだんだけど、この引用したところを読んで、ぱぱっと頭の中にある情景が再現されてしまったので、以下吐き出してしまう。(finalventさんの意図からはかけはなれた話になっているかもしれませんがそこんとこはよろしく。)
 なんか、この間日本からきた中年のおじさん(おじさんって当然中年か、ってオレもなりかかってるが)と食事に行く機会があったのだが、日本のおじさんって「これこれはこうなんですか。(教えて)」って(特に彼らにとって目下の人に)尋ねることができないのね。そのかわりに「これこれはこうなんですよね?」としかいえない。自分の知っていることの確認、あるいは自分の知っていることへの同意の要請、というかたちでしか質問できないのだ。
 少し些細といえば些細な例なのだが、そういう「これこれはこうなんですよね?」型の質問(?)が続いた後に、「イギリス人にはやっぱジェントルマンが多いですよね」と聞かれた。そう振られても困るわけだが。とりあえず「イギリス人はジェントルマン」という紋切り型があって、ちょっといい感じの対応をされると「おお、イギリス人はジェントルマンだ」とその信念は強化される。で、その限りにおいては別にその信念が現実と対応しているわけなので「いえ、違います」というのも変なのだが。。でもやっぱり変だよ。それは。
 いや、それはとりあえずどうでもいい。問題なのはおじさんは「イギリス人にはやっぱジェントルマンが多いような印象があるんですけど、それってどうですか」といった質問がまったくできないのだ。つまり、とりあえず自分は知らないという立場にできない。とりあえず何かを知っている自分は確保しておきたい。
 こうなると、きちんと説明しようとすると、どうしてもこのおじさんの言ったことを、一度否定しなければ前にすすめないのだ。実際、ジェントルマンといってもこれは中産階級以上のはなし(しかも今や誰も使わぬクリシェ・紋切り型)であり、ワーキング・クラス(労働者階級)のおじさんたちにとっては「ジェントルマン? おお、オレはジェントルマンだよ。わはは。まあ、一杯飲めよ」ってなもんで笑い話にしかならんだろう(つうか、その当の日本人のおじさんにはそれが笑い話になっていることもわからないわけだが)。いや、中産階級の人にとっても笑い話だろうが、とりあえず彼らは礼儀正しいのは礼儀正しいので「そうですねえ。そうあるべく心がけはしますが」とかいってるのだ(笑)。国際親善かくあるべきかな(w
 話がずれた。きちんとこの人に説明するとしよう。たとえば「中産階級の、たとえば大学の先生とか弁護士とか、そういう人たちの振る舞いは、日本人にはジェントルマン風に見えるかもしれないので、その限りではジェントルマンが多いとはいえるかもしれません。でも、イギリス人といっても労働者階級の人になると日本人が思うジェントルマンとは無縁の存在ですし。いずれにせよ、ジェントルマンというのは日本人のもつイメージで、今のイギリス人はあんまりジェントルマン云々とかいうこと考えてないと思います。」と言うとしよう。そうすると「ジェントルマンが多いですよね」というイェス・ノーの質問にどことなくノーという部分を含んでしまう。
 で、ここで書いたような答え方を若い男がこのおじさんに対してやると「そうかあ、おもしろいねえ」となることもあるが、女の人がやると「そうなの」といいながら「小うるさいやつだ」という顔になってしまう(ことが日本では往々にしてある)。なので、女の人はわざわざ真(の全体)をいって、相手を煙たがらせるのもめんどうなので「そうなんですよ」とかいって流してしまうのだ(男でも結構いるだろうが、その割合は女の人に比べれば低い)。そこで、おじさんは、自分がいっていることが承認された(正しい)と勘違いし、そしてこうした勘違いはことあるごとに積み重なっていってしまうのだ。その結果、そのおじさんは「天地の下にただ一人ある」と思っているのだが、それは正しいとも間違えているともいいかねる奇妙な信念をたくさんもった「変人」でしかない。「その変人を、日本の女はじっとささえている」のだが、それは同時に、めんどくさいからいわせてままにして放っていることでもあるのだ。
 ノーといわれたくなければ、最初からイェス・ノーになってしまう問いの形にしないで「こういう話があるけど、それってどうなの?」って聞いたほうが得だと思うのだが、おじさんたちにとっては、とりあえず自分が知らないということにはできないから、自分で自分を追い込んでいることになっている(というか、そのことにすら気づいていない)。
 この方はたいへんオープンマインデッドな方でたいへん好感をもったことは記しておきたい。その方にしてそうなのだから、なかなか難しいのだ。
 しかし、おれも男だから自戒せんとな。他人事だと思っていると。。(w