共感覚

ホライズン(Horizon)という番組について去年何回か書いた(上の検索欄をつかってちょ)今年で40周年を迎えるBBCの看板科学番組だ(新シリーズが先週からはじまった)。昨日のテーマは共感覚 synaesthesia だった。言葉に色のイメージを感じたり、味やにおいと視覚・聴覚が結びついたりする人がいる。以前、ラマチャンドランの本を読んだときに共感覚の話が何回も出てきて気になっていた。*1 
 共感覚については東京新聞の以下の記事を参照。
 「五感の重奏『共感覚』:『だれもが保有』ふだんは潜在化」
 この記事はまつたにさん(id:TRiCKFiSH:20040915#p1)経由で知ったのだが、まつたにさんは共感覚の持ち主なのだそうだ。
 昨日の番組の要約がすでにBBCのウェブサイトに上がっている()。番組でつかわれたナレーションをすべて文字化したものもしばらくするとウェブにあがるはずだ(ひょっとすると近い将来日本でも見れるBBCワールドでやるかもしれない)。前も書いたけど、ホライゾンのいいところは、少しこの要約の最後のセクションで少し話をふくらませるところなのだ。時間がないので訳さずにそこの段落を引用。

Making sense of the world
A few scientists believe that synaesthesia might even explain how we evolved two of the traits that define our species and have transformed our world - creativity and language.
Many famous artists have been synaesthetes - the jazz legend Miles Davis, for instance, and the painter Kandinsky. In fact, a number of studies suggest that synaesthesia may be more common among artists, poets and musicians. This has led some scientists to argue that synaesthesia and creativity may share a similar basis - that both may be down to brain processes that involve linking two seemingly unrelated areas.
Some believe that our common synaesthetic abilities may also have been the springboard to language. Connections between our senses of hearing and vision, for example, could have been an important initial step towards the creation of words. Our earliest ancestors may have first started to talk by using sounds that actually evoked the object they wished to describe. According to this theory, language could have emerged from the multitude of synaesthetic connections within our brains.

 ああもういいや、要するに、二つの異なった、一見関係なさそうな領域をリンクする共感覚と芸術家の創造性が結びついている可能性。マイルズ・デイヴィスとかカンディンスキーとかも共感覚をもっていたという。それから、ある学者たちは、共感覚がそもそも人間が言語を獲得するにいたった飛び板ではないかと考えている。たとえば、聴覚と視覚のつながりが、言葉の誕生にむけての最初の重要なステップであったかもしれない、というのだ。
 そうかどうかはともかくとして、ラマチャンドランとかでも明らかだけど、いわゆる一般的に例外的だと思われている事柄を注意深く見ていくと、一般的な事例だけを見ていたのでは不可能な、一般的な事例についての深い認識を得られるというこのアプローチは興味深いなあ。(こういうアプローチはアナール派歴史学が事件史に回帰したとき(例えばルロワ・ラデュリの『南仏ロマンの謝肉祭(カルナヴァル)―叛乱の想像力』(ISBN:479480542X この本日本語に訳されてたの今初めて知った)とかの話とダブってみえる。)

id:sivadさんに
永遠の森 博物館惑星』(asin:4150307539)
という本をコメント欄で紹介してしてもらう。けっこう、SFの人のあいだでは話題になった本なのですな。

*1:BBCの講演を本にしたやつだ。5月にシカゴに行ったときにたまたま空港の本屋で買ったのだった:とりあえず日本語では『脳のなかの幽霊』ISBN:4047913200 このなかに共感覚の話がでてくるかどうかはしらない。この本については黒木さんのコメント