苺経済板経済学の数学って適当すぎねえ?スレ私的抜粋版

 まえに、数学的モデルの歴史とその特徴と使い方についてスレを興味ぶかく読んだ記憶があるのだが、その続きが夏になされていたとは不覚にも知らなかった(部室へのドラエモン氏の書き込みで知る)。苺は読むときとまったく読まないときがあるのだ。このスレの後のほうで話題になっている数学リテラシーなどない文系なので、わからん話題も多いし(泣)。でも、わからなくても、おもしろいことはわかる(笑)。個人的に特におもしろい箇所を抜いて(面白い話題はほかにもあるのだが泣く泣く削った)、改行削除、一続きの投稿は一括し、一つ二つリンクをつける(リンクにスレタイトルをつける)など適当に変えた(原文が別に読めるからいいよね)。ドラ万歳(笑)か。

82: ドラエモン  2004/07/27(Tue) 16:16
 なんか、厳しいやり取りになっているが、考えるべきは経済学の数理化なんて高々150年の歴史しかないし、ある程度広く受容されるようになったのは第二次大戦後のことに過ぎないという事実。
 数理化の立役者の第一人者であるサムエルソンが、一体なにをしたかというと、森嶋先生と同じことだったのね。つまり、スミスからケインズまでの経済学者の理論を数学に書き直して、内的論理の整合性をチェックしたり、特殊理論を一般化したり、その場限りの分析方法を普遍化(比較静学と対応原理とか)したりということ。(経済分析の基礎参照)
 つまり、数理経済学の伝統がサムエルソンに代表されるとするなら(もちろん反論はあるだろうが、一応、そう仮定する)、その基本的方法は、「日常言語で展開されていた経済理論を数理化により強化する」=「経済学としての内実は実は進歩していない」なわけ。
 大天才のスミス・リカードマルサスマルクス、ミル、マーシャル、ジェボンズワルラスメンガー、ヴィクセル、ケインズといった人々の洞察で発見された鉱脈を効率よく掘削する技術が数理化であったというわけ。
 で、森嶋さんの批判「数理化の限界生産力逓減」というのは、そもそも鉱脈が完全に掘削されてしまい、もう金もダイヤも残ってないから、新しい鉱脈を探しに行くべきであり、それには洗練された掘削技術よりも、鉱脈探査技術こそが必要だといってるんだと解釈することができるわけ。
 経済学はシステム科学だから、断片化されたデータは余り意味をもたず、統一された視点から収集されたデータセットとかデータベースが重要。で、古典経済学はまさにデータベースだったわけ。数理は検索エンジンと言っても良いんじゃなかろうか。
 データベースがなきゃ話にならんが、検索エンジンがなければ宝の持ち腐れ。問題は、既存のデータベースの中身に価値あるものが残っているのか、いないのか?もしないならどうするか?なんだと思うよ。
 
108: ドラエモン  2004/07/29(Thu) 18:06
 [略]ハミルトン力学じゃあないけど、見かけ上、制約条件下の最適化行動として定式化できるものは本来の主体行動だけじゃなく、いろんな所に見つかるんではないか。だとすると、世界は経済学に満ちあふれているという感想を持つ(さらに進んで、制約条件下の最適化行動に神秘的な意味を付与していると思われるような)人がでてくるんじゃあなかろうか? で、経済学とは何かという設問に対して、最適化行動の学問と答えるのか、最適化行動を仮説として用いる(だから、現象に合わないなら別の仮説を使うことも厭わない)学問と答えるのかは似ているようで、実は大いに違っているのに、自覚してない人が多いような気がする。

130: 名無しさんの冒険  2004/07/31(Sat) 11:53
クルーグマン先生は進化生物学を勉強しろとおっしゃっています。
http://web.mit.edu/krugman/www/evolute.html *1

162: bewaad  2004/08/01(Sun) 03:27
このスレ、正直私ごときがついていけるレベルではないのですが・・・。
>161
ここでドラ様がおっしゃっていることは、以前黒木さんが顔を出されていたときに問題提起されていた、universalityの話と重なるところがあるのでしょうか? 雰囲気的には、そうした感を持つのですが・・・。
>当時いらっしゃらなかった方々 数学的モデルの歴史とその特徴と使い方についてスレをご覧下さい。

178: ドラエモン  2004/08/01(Sun) 22:13
 黒木氏の説明を読んで、僕なりに勝手に解釈したことを述べたい。このスレの前の方でも述べたが、サムエルソンは経済学の数理化に絶大な貢献をし、20世紀後半の経済学の進歩を生み出した第一人者ではあるが、同時に進歩の方向を一方に集中させすぎたという失敗も犯しているように思う。
 つまり、サムエルソン以前の経済学(ケインズまで含めた)は、日常言語による分析であったがある意味で仔細なモデルスペシフィケーションに依存しない命題を見つけだす努力でもあったと思う。僕は、勝手に、これは「ユニヴァーサリティーのある命題の追求」であったと考える。
 ところが、サムエルソンによって、過去の大家の業績の一部が厳密に数理モデルに書き直された結果、特定のスペシフィケーションの研究が経済学であるということになってしまった。モデルの奴隷になってしまったと言っても良い。
 マネタリスト論争の評価は色々あるが、基本的にはフリードマンの勝ちだったと思う。ところが当時の論文を読めばわかるが、フリードマンの「モデル」は普通の意味でのモデルではなく、きちんと閉じていないものばかりだ。僕自身、「モデルもないのに何言っても無駄」と思っていたわけだが、結局は「貨幣の長期的な中立性」、言い換えれば「自然失業率」とか「自然利子率」の存在という命題だけに依存していたフリードマンが正しかったわけ。(ただし、k%ルールは今や誰も支持していないだろう)
 要するに、サムエルソンによって経済学は「モデルの科学」になったが、やはり本来は実証科学ないし経験科学であり、特定のモデルに依存しない頑健な命題を主張する方が最後は勝ったのだと思う。
 もちろん、時に天才は現れ、ユニヴァーサリティーのある命題を導く新たなプロトタイプモデルをスペシファイして論文を書く。アカロフがその代表だろう。ノーベル賞を貰った「レモン」は一見すると恣意的で制約的で、こんなモデルだめじゃんと思うようなものだった(事実、あちこちのジャーナルでリジェクトされたらしい)。だが、結果的には、そのプロトタイプの上にこそスティグリッツなどの膨大な研究がなされ、経済学のある面を一新してしまったのである。
 つまり、悪く言えば、サムエルソン以降の経済学者の大部分は、ユニヴァーサリティーのある命題の発見にはあまり興味はないと思われる。しかし、ひとたびそうした命題を反映したモデルが提出されると、雲霞のように押し寄せて、その含意をすべて引き出すという能力は十分に持っているといえるのではないだろうか。

ユニヴァーサリティーがあるかどうかは全くべつにして、いろんな分野で似たようなことはおこってるよなあ。

134: ドラエモン  2004/07/31(Sat) 14:06
>132
 どうも以前から感じて居るんだけど、日本の文系・理系の過度の分離というのは、科学的な批判精神を持ってる人を社会問題への興味から遠ざけるための社会的装置として機能しているんではないのかな?我々、この現象は理系人間は社会問題なんかに興味がないからだと信じ込まされてきたけど、実際は逆なんじゃなかろうか。
 和魂洋才というのが、明治時代に確立した日本の支配層の理想なわけだが、和魂は社会認識、洋才は科学技術(特に軍事技術)であって、これが交差してはイロイロ不味いということなのではないかねぇ。

138: 名無しさんの冒険  2004/07/31(Sat) 17:01
>134
理系と文系の区分は元々、教育コストの削減のために導入されたもので、こういう区分は発展途上国の特徴なのだそうな。http://umi.no-ip.com/simple/pdone.html?id=306
実際、日本の文教費は先進国の中ではかなり低く、コストパフォーマンスという点から見れば優秀なのだそうで。しかしこの区分が、視野が偏っていて支配層に都合の良い人間を作り出すという機能を持っているのは、ドラ氏のおっしゃる通りかも知れませんね。
 
139: 名無しさんの冒険  2004/07/31(Sat) 17:53
>138
>支配層に都合の良い人間
↑てかこういう発想そのものが左翼的妄想w 自分は他の無知蒙昧な庶民と違うと言いたげな、とんでもない思い上がり、唯我独尊。支配層に都合が良い=一般国民に都合が悪いなんて何で決め付けるの?変な論理だな。
 
145: ドラエモン  2004/07/31(Sat) 23:00
>139
支配層という言葉に反応しているようだが、たとえば大手のマスコミや広告屋なんかは、やっぱ支配層だと思うけどねぇ。娯楽番組一つとっても、「私はUFOにさらわれた」とか「ノストラダムスの大予言」とか、「水子の呪い」とか、お手軽な馬鹿番組作れば済むような社会は楽だろう?(笑)国民の平均レベルが上がって「一番近いアルファケンタウリから何百年もかけて地球まできて、どっかのおねえちゃんやおじさんを誘拐してエッチな実験するほどエイリアンも暇じゃないだろう(プ」とか言われちゃ困るんじゃんない?最低でもプロジェクトX位の番組作らなきゃならないなんてテレビ屋の悪夢だろう(笑)
 で、そういう恥ずかしい番組を垂れ流している放送局が、コマーシャルの後で政治討論番組やら「経済危機の真相はこれだ」とかいう番組流しても、まともに聞くきにはならんのじゃない? 金のためなら、平気で人を馬鹿にした番組作る連中がまともな社会や経済の分析できるはずがないもんね(笑)

42: 名無しさんの冒険  2004/07/25(Sun) 10:58
黒木掲示板(と山形浩生)の最大の功績は物理屋と経済学などの人文・社会科学の出会いを演出したことだろうな。日本のプチサイエンスウォーズの最大の成果だと思う。理系と文系の対話だな。俺もあそこ経由でここにきたのだし。

これはほんとそう思う。

*1:経済学と進化論山形浩生による翻訳