ゼイディー・スミス『ホワイト・ティース』佳境

id:flapjack:20050910#p1でふれた『ホワイト・ティース』ですが、めちゃくちゃおもしろい。最初、彼女の英語のリズムになれるのに数ページかかったけど、その後快感に。至福ですなあ。電車のなかで読んでいたとき、おもわずふきだしてしまって、やばかった(勘違いミドルクラスのジョイスとゲイの女の子二人の会話のところ)。第二次世界大戦から90年代にいたる、北ロンドンの、バングラデシュとジャマイカからの移民一世と二世、ワーキング・クラス・カルチャー、ミドル・クラスの家族(彼ら自身も実は数世代前の東ヨーロッパからの移民)、宗教(エホバの商人、イスラム教)、遺伝子工学者、急進的思想集団(イスラム原理主義者、破壊的動物愛護運動家)、こうした現代のポスト・コロニアル状況をまさにパノラミックに描いた野心的な小説。これを24歳で書いてしまうのだから恐るべし。
 この小説のストーリーを「ハチャメチャ」と評していた人がネットでいたけれども、そりゃちがうんだよ。現実がすでにそういう状況なのだよ。その現実を理解しようと思えば、ジャマイカにも話は飛ぶし、バングラデシュにも話は飛ぶし、ありとあらゆるところに話はとばざるをえないわけ。フィクションだけど、実際に思い当たることありまくりだし、ある意味ではものすごい正確なイギリス社会の描写だと思う。しかも、おもしろい。この人の小説は全部読みます。
 邦訳は見てないんだけど、とりあえず邦訳のリンク上げときます。
ホワイト・ティース(上) (新潮クレスト・ブックス)
ホワイト・ティース(下) (新潮クレスト・ブックス)
 あ、いろいろ書いたけど、今日いちばん書きたかったのは、来年自衛隊イラク撤退しそうだ、という最初のエントリーです。