考える材料

山形浩生「天下りは悪くないかも」(2004.8.28)
でもこっちのほうが「らしい」かな。
今月の喝! NPOインパク協会」(『CYZO』2001 年 04 月)

増島俊之氏(総務庁出身)「9章 国家公務員制度と人材管理制度の見直し」「中央省庁等改革問答集」より。

問76 現在の日本の公務員制度はどのようになっていますか?
【答】日本の国家公務員制度における公務員試験は、ごく一部のエリートを入口で選別(国家Ⅰ種)し、Ⅱ種・Ⅲ種というその他いわゆるノンキャリアと呼ばれる部分をもう一つ選別する、という方法で長い間行われてきています。そして、その合格者の中から各省ごとに採用するという仕組みになっています。また、入省後の役職は通常ピラミッド型に編成されており、採用年次に基づく硬直的な人事管理が行われています。
 このような日本の官僚制は、勤労意欲の高さ、優れた人材吸収能力、公益追求の使命感が醸成されている点ではかつては高い評価を受けていました。しかし、現在は様々な批判が寄せられています。第一はセクショナリズムです。昇進が省庁単位で判断されるため、仲間内で評価されることを望む結果、国全体あるいは内閣に対しではなく、自分の省庁の利害を考える傾向が強く見られます。第二は特権的閉鎖性です。入省時の区分に応じてある程度までは自動的に昇進する人事慣行が大きく作用しています。第三は天下りです。ピラミッド型のポスト配置が原因であり、日本の官僚人事システムの限界を露呈する問題といえるでしょう。

問77 人事管理システムの見直しはどのように考えられていますか?
【答】現在、省庁官僚制の閉鎖性、政あるいは財に対する影響力をある程度是正しようという考えから、公務員の一括採用が主張されています。政府が一元的に採用し、各省庁に配分することによって、各省庁ごとの狭いセクト主義を打破できないかというのがその考え方です。最終的には、各省庁間の自由な異動によって人材の有効活用を目指しています。専門的能力、資質を備えた優れた人材の確保が損なわれるのではないかという危惧から、任命権を一箇所に集中するような一括管理には慎重な意見が多く、また、恣意的な人事を招いたり、公務員に対する政治的なコントロールを懸念する声もありますが、横断的にこれからの国政を、行政の立場としてどのように司っていくかを考えた場合、一括採用は有効な手段といえるのではないでしょうか。

問78 いわゆる『天下り』とは何ですか?
【答】日本の公務員制度は、強い身分保障が法律で与えられていて、原則として終身雇用が可能な制度です。しかし、採用年次別昇進等の硬直的キャリアシステムが早期退職を促し、これによって、役所による第二、第三の就職先の斡旋が行われており、官民癒着構造の根幹になっています。しかし、役所での知識・経験を民間の活動に役立てることの意義と、職業選択の自由という両側面から全面禁止にすることは難しいですし、適切な方法ではないと思われます。基本法の中では、「退職管理の適正化」(第48条)という文言でのみ天下り問題に触れています。そこで解決策として、65歳への定年引き上げ、同時に機能的な組織観の確保が望まれます。また、在職期間の長期化によって個人に強い許認可権限が集中することが懸念されることから、内部的なチェックの仕組みも整えるべきでしょう。
 さらに企業への再就職については、役所の人事当局による権限を背景とする組織的な就職斡旋を廃止、求職求人情報を一元化する人材バンク部門の設立を推進すべきであるとの議論がされています。
 今後、公務員制度調査会において調査審議がなされるということですが、公務員のライフサイクル全般を視野に入れた人事管理が望まれます。