ザ・ロード・オブ・ザ・リングス(「指輪物語」)における人種

http://d.hatena.ne.jp/kmiura/20040226#p1(色禍論)との関連で。
大蟻食の生活と意見(25)
http://home.att.ne.jp/iota/aloysius/tamanoir/idata/iken25.htm

ごく正直に告白しておくなら、私は「指輪物語」自体に我慢がならない人間である。実のところ、おぞましくてどうしても読み通すことができずにおり(「旅の仲間」の途中で嫌になる)、最後まで読めば違う筈だという意見に対しては、どのみち読めっこないから一言もない訳だが、それにしても、たとえば旧ユーゴスラヴィアの解体に伴う惨状を目にした後でなお、異種族が雑じり合うことなく棲み分けて純血を保っているなどという話をどうして平然と読めるのか、私には理解できない。現実の世界においては必ず、市民権の剥奪、強制移住民族浄化と収容所とガス室を伴わざるを得ない状況を(人類は相違を相違として尊重できるほど成熟していない。できると思うのは幻想であり、必ず悲劇的な結果を招く)小綺麗に白く塗って仕上げた代物を、どうやって平然と読むことができるのか。

すこぶるアングロサクソン的な無邪気さだ。この無邪気さが、クロアチアの独立に始まる旧ユーゴのなし崩しの解体を、民族の解放として喜んで、何の手も打たないままに混乱を招いた政治的無邪気さに通じていることは言うまでもない。ジャン=マリー・ルペンなら、或いはハイダーなら、この種の無邪気さを大いに喜ぶだろう。極右は必ず、移民を排斥するつもりはないと主張する。ただ、異種族として棲み分け、最小限の交流をもつだけにしたいだけだ、と。